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14.第一王子の結婚(4)

溺愛に気づかない彼女は、つぶやきで世界を変える
この記事は約5分で読めます。

「やだ! やめっ……っ!」

ルカの伸ばした手に捕まる。

抗って逃げようとしたが、壁にぶつかりセラフィナは逃げ場を失った。

(こんな……)

友人だと信頼していた男。

好意に気づいて、好きだと伝えた。

それに返ってきた答えは「セフレならOK」。

そして、いま、襲われている。

(こんな男だなんて……)

男を見る目がない自業自得だろうかと、セラフィナの目に悔し涙が浮かぶ。

「やだってばっ!」

抗うのに、ルカは片手なのにがっちり固められて逃げられず、気づけばシャツのボタンが三つも外されていた。

息つく間もなく大きく緩んだ襟元を押し下げられ、上半身がむき出しにされてセラフィナは息を飲む。

せめて前は隠そう。

ジタバタ暴れた末にルカに背を向けることに成功し、胸の前で両腕をクロスして壁際でガードした。

「ひうっ!」

背中を他人に、ルカに触れられたことにセラフィナは声をあげ、びくりと震える。

その手の大きさと熱さに、瞬く間に肌が粟立つ。

ゼフィリオンは男女関係に寛容な国だ。

特定の相手を作らず、気分やタイミングで「そのときの人」と体の関係をもつことも珍しくない。

セラフィナは一人で酒場に出入りしている。

信頼できる店主のいる店だから滅多にないにしても、出会いを求めていると誤解されて男性に誘い掛けられたことは何度もある。

大体は話しの通じる相手で「迷惑だ」と言えば済んだが、一度だけ、何も言わずに強引に肩を抱かれたときは不快な思いをした。

(それなのに……)

あのときは男の手が肌に直接触れたわけではない。

触れたのだって一瞬。

床が濡れていたらしく、男は滑って転んで頭を打ち、気絶した状態で店から運び出された。

いまは違う。

背中の肌にルカの手が触れている。

いや、触れているなんてレベルではなく、がっつり触られている。

しかも上半身は裸。

思いっきり肌を晒して、遠慮なく上下左右にとルカの手が蠢いているのに、驚くほどに嫌悪や不快感はない。

それどころか――期待している自分がいる。

思った男ではなかったとしても、それは人間性の問題。

端正な見た目や逞しい体は依然変わらず、そんな男に求められていることにセラフィナはゾクッとした。

セラフィナがもう少し性に明るければ、それが女として悦んでいたのだと分かっただろう。

いや、自覚はなくとも本能で分かっていた。

一夜限り。

それでもいいと、一夜でもいいからこの男がほしいと思う自分にセラフィナは気づく。

(これが、惚れた弱みってわけ?)

弱い自分を嘲笑おうとしたが、できなかった。

背中に熱い、濡れた感触を覚えたから。

(これって……)

背中にルカの唇が触れている。

口づけられている。

それを理解した瞬間――。

「好きだ」

耳をかすめたルカの甘い声にセラフィナの心が痺れた。

(……顔のいい男は、これだから)

男性との経験がないセラフィナでも、最中に男が紡ぐ甘い言葉を信じると痛い目にあうことは知っている。

セフレの提案を受け入れていない。
でも、拒絶もしていない。

それをルカはいいように解釈したのだろうとセラフィナは唇を噛みながら思う。

自分の性格は分かっている。

ルカの提案した「セフレ」にはなれない。

セフレ宣言に目減りしたとはいえルカに寄せる好意は依然として存在しているため、割り切れる性格をしていない自分はいつか必ず苦しむ。

(でも、今夜だけと割り切ってしまえば?)

セラフィナは純潔ではあるものの、頑なに大事に守ってきたわけでもない。

言い方を悪くすれば、相手をえり好んでいたためいまも純潔だったという結果論。

だから――それならという気持ちにぐらぐら揺れる。

ルカの甘い嘘に騙されてみてもいいんじゃないか、今夜ぐらいはと。

「……セラフィ?」

ルカの動きがピタリと止まった。

くるりと体を回され、ルカと対面する形で向きあった。

頬に大きな手が添えられると、ぬるりとその手が滑る。

「どうして、泣いているんだ?」

***

「セフレなんて……嫌……」

セラフィナのその言葉にルカヴィスは頭を思いきり殴られたような衝撃を受けた。

セラフィナの背中の模様の確認に夢中なあまり失念していた。

この状況はセラフィナにとっては襲われているような形。

「ごめん、俺……」

「私も……嫌なら、ちゃんと嫌だと言うべきだったから……」

「嫌……」

触れられるのが嫌だったのだろうか。

そう考えてルカヴィスは頭を鈍器で殴られたような痛みを味わう。

「エールの匂いで、盛大に酔ったということにしよう」

一人納得してセラフィナは“うんうん”と頷き、ルカヴィスにへにゃりと笑ってみせる。

「全部忘れよう。ルカが私をセフレにしようとしたことは忘れてあげる。だからルカも、私が好きだと言ったことは忘れてよ」

(嘘だな)

だってその言葉が本当なら――この瞬間にもこれまでの経緯を忘れたはず。

でも覚えている。

セラフィナが自分を好きだと言ってくれたときのことを、仔細まで、はっきりと。

「嘘つきだな、セラフィは」

ルカヴィスの言葉にセラフィナの目がつり上がった。

「でも、俺のほうがもっと嘘つきなんだ」

「……ルカ?」

ルカヴィスは大きく息を吸い……。

「俺の本当の名前はルカヴィス――この国の王太子なんだ」

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