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19.私たちの主 | 双子の専属侍女(1)

溺愛に気づかない彼女は、つぶやきで世界を変える
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セラフィナが神の愛し子であることは、うっかりとセラフィナの近くで口伝しようと思った者たちが軽く神にお仕置きされつつも、瞬く間に離宮に広がり、城にもあっという間に広がった。

そして、セラフィナはルカヴィスの妃候補として歓迎された。

あまりに歓迎されたため、セラフィナは疑いをもった。

王太子の力で何かしたに違いないと関与を真っ先に疑われたルカヴィスだったが、その理由については説明できず、どうしようかと悩むルカヴィスにマルセラが妙案を出した。

お試し期間をもってはどうだ、と。

「様子を見て、嫌なら振ればいい」というマルセラに、セラフィナは「格好いい」とほれ込み、それ以外の者は「おいおい」と慌てた。

振られなければいいのだというマルセラの一声で始まった「お試し期間」という名のルカヴィス売り込み月間。

月間ではない。

目指せ、無期限。

セラフィナの部屋については、いろいろ意見もあったが、「目に入る範囲にいなければ売り込みようがない」というルカヴィスの意見が採用されてルカヴィスの隣の部屋になった。

家具に隠れているためセラフィナは知らないが、内扉で繋がっている夫婦の部屋だ。

セラフィナの専属侍女については「選抜」が行われそうになったが、これについてはマルセラに問われたセラフィナが「双子がいい」と言ったため不戦勝で双子のメナとユラが選ばれた。

(初めてお会いした日から今日で二ヶ月……と十三日)

細かくカウントするほど、双子は毎日楽しくセラフィナの傍にいた。

双子はもともとルカヴィス専属だった。

寝室にも入ることができる専属侍女の特権は側室や愛妾への近道なので人気はあったが、双子は未練などなくセラフィナのもとで楽しくやっている。

双子は揃ってルカヴィスに男として興味はないし、近くにいた分だけルカヴィスの気性も分かっている。

さすがあのカリスティオンの子。

セラフィナにぞっこんで、他の女性など路傍の石と同格。

(過去に遊んでいた男ほど、この女性って決めると一途なのって本当なのね)

専属とはいえ侍女が知るほど遊んでいた王子様の本気はすごかった。

まずは定番のプレゼント作戦。

たまに平民向けの居酒屋で飲むくらいしか金の近い道がなかったルカヴィスは、「貯蓄は十分ある」と言っていま稼いでいる金は全てセラフィナに貢いでいる。

あれもこれもと欲しがるタイプではないセラフィナだが贈り物は素直に喜んでいるし、それを身に着けた姿をルカヴィスに見せることを楽しみにしている。

この二人、両思いだな。
お試し期間なんているのかな。

そんなことを思いつつ、双子はセラフィナを着飾らせることを楽しんでいる。

いままで離宮で世話されるのはルカヴィス一人。

ルカヴィスも整った容姿をしているが、男性のため「着飾る」が双子には物足りなかった。

ドレスを選び、宝飾品を選び、髪を整えて、化粧を施す。

セラフィナの世話のほうが遥かに楽しいのだ。

「セラフィナ様。離宮専属のパティシエが作ったケーキです。隣国で採れた果物を使われております」

最近ルカヴィスはスイーツ好きなセラフィナのために専属パティシエを雇った。

彼もいまお試し期間、というより、採用試験の真っ最中。

「いかがですか?」

「とても美味しいです」

ルカヴィスはあまり甘い物を好まないため、本人は知らないが採用権はセラフィナが持っていた。

そしてセラフィナが気に入ったため彼は本採用になった。

ちなみにこれ以降は「男だから」という理由で彼がセラフィナの前に立つことはなくなるのだが、それはまた別の話である。

「隣国は珍しい果物が多いわね」

「我が国と違って一年中温かいですからね。植生もかなり異なるのでしょう」

「隣国は生活しやすいのかしら?」

その質問に双子が首を傾げると、質問の内容が曖昧だと思ったらしいセラフィナが政治情勢や経済の安定、あと治安の良さを尋ねてきた。

やけに細かな質問。

まるで――。

「旅行とは違って移住するとなるとやっぱり……「「移住!?」」」

ティーポットを傾けたままメナは動きを止めたが、注がれる紅茶のほうは動き続ける。

カップから溢れ、ソーサーからも溢れ、テーブルから地面へと赤茶色のカスケードを作りはじめる。

「メナ! ユナ、メナが……ユナ、顔色が……二人とも、どうしたの?」

セラフィナの問い掛けに二人はハッとし、机の上がビショビショなことにメナは悲鳴を上げ、ユナはセラフィナに詰め寄った。

「セ、セラフィナ様、いま、移住と仰いました?」

「うん。三ヶ月後をめどに隣国に……」

「セセセセ、セラ、セラ、セラフィナ、フィナ様。おおおお、落ち着いて、落ち着いてくださいませ!」

「……ユナのほうが落ち着いたほうがいいと思うわ」

さすが神の愛し子。

その一言でユナの気持ちはスンッと落ち着いた。

こうしてユナは落ち着いたが、メナのほうは落ち着いていなかった。

セラフィナは「二人とも」と言うべきだった。

「メナ、どこにいくの?」

「ルカヴィス殿下をとっちめに行ってまいります」

突然だなと驚くセラフィナの手をメナがぎゅっと握る。

「やっぱりマルセラ様のところに行って、マルセラ様にルカヴィス殿下をとっちめてもらいます」

「そのほうが効果はありそうね」

「だから、どうか、隣国に移住するのはおやめくださいませ」

「……あ! ごめんなさい、私ではないの」

自分が突然移住と言ったから驚かせたのかと、セラフィナは苦笑した。

「隣国に移住するのはアルカ商会長ご夫妻よ。奥様からの手紙に、商会を閉めて隣国にいる息子さんのところに行くのだと書いてあってね。だから治安とか気になっちゃって……お二人にこの先何ごともなければいいけれど」

(いまこの瞬間にその懸念はなくなりましたわ)

アルカ商会長夫妻は隣国で暮らす息子家族と暮らすことに決まった。

キッカケは隣国との交易が停止したときに持病の薬が切れかけたことで、同じことがあったら怖いし、息子夫婦にも心配だと言われて決意したのだという手紙を夫婦はセラフィナに送っていた。

アルカ商会長夫妻が移住先を決めたのは持病の薬が隣国のものだからで、交易が停止されたときは困ったという話から、話題は当時起きた城の大事件「ルカヴィス暗殺未遂事件」になっていった。

「あのとき拾って泊めた男の子が、まさか第二王子のノアルド殿下だったなんて」

セラフィナはあの夜、身なりの良い子どもが一人で夜道をふらふらしているのは危険だと思った。

そして保護し、身の上話を聞いて――。

「ノアのお兄さんが元気になるようにって思ったけれど、そのお兄さんがまさかルカヴィス殿下とは思わなかったわ」

(普通は思わないわ)

(あの“奇跡”はセラフィナ様の御業ってことだったのね)

「ルカヴィス殿下とセラフィナ様は出会う運命だったのですね」

「出会う運命というよりも“世間は狭い”と言ったほうがいいのではない? 殿下のことは街でよくお見かけしていたし……そう考えると城下町って王子との遭遇率が高いのね」

「……そうかもしれませんね」

セラフィナの最も近くにいる双子はルカヴィスとマルセラからルカヴィス売り込みの先鋒を任されている。

しかし、上手くいかない。

その理由は――。

「あの子とか、あの女性とか……元カレが『王子様』だと知ったら驚くに違いないわ。王子様みたいとは言っていたけれど、本当に王子とは普通思わないし……いま思い出したけれど、王子様って関係をもった女性を妾にしなくていいの?」

((殿下!))

他でもない、ルカヴィス本人のせいだった。

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