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16.真実を明かす(2)

溺愛に気づかない彼女は、つぶやきで世界を変える
この記事は約6分で読めます。

突然変わった景色にルカヴィスは驚きの声をあげる余裕もなかった。

城の中のようだけれど、見覚えのない広い部屋だ。

そして目の前には五人の男。

男たちが醸し出すすさまじい威圧感に、ルカヴィスは無意識に膝をつき、頭を下げていた。

「かしこまる必要はない。ただお主にお願いがあっただけだ。突然すまなかった、気分は悪くないか?」

ルカヴィスに気遣う言葉をかけたのは、右から二番目の椅子に座る長い緑の髪を紐で束ねた男。

ルカヴィスは彼がゼフィリオンを加護している神だと直感した。

「その通り。我は大神エルデウスの一番目の子、風の神。隣が三番目の子、水の神」

「我は火の神、大神エルデウスの二番目の子。隣が四番目の子、土の神」

左から二番目の獅子のような赤髪をした男が火の神を名乗り、教えたことで残りの一人、中央にいる者が誰なのかルカヴィスには分かった。

(大神エルデウス……)

この世界を創生した神を前にして、緊張で喉が渇く。

喉を唾を飲んで潤そうとしたとき、そのエルデウスが大きなため息を吐いた。

「毎回思うのだが、これ、必要かのお?」

(……ん?)

「必要です。まずは先手、思いきり威圧して相手の出鼻をくじくのです」

火の神の言葉にエルデウスが不貞腐れたように唇を突き出す。

「神に敬意を持たぬ……ぶっちゃけ、神に舐めた態度をする者を番に選ぶような者がセラフィナの力を継ぐことはないのだぞ?」

「父神様。”ぶっちゃけ”など品のない言葉はおやめください」

知ると直ぐに使いたがると溜め息を吐く土の神をちらっと見たエルデウスはルカヴィスに肩を竦めてみせた。

茶目っ気がある愉快な神だとルカヴィスは思った。

「おぬしをここに呼んだのは、愛し子に愛し子だと教えることはできないことを教えるためだ」

「天命の証が背中にあるから、セラフィに見えないから彼女が知らない……というわけではないということですか?」

その通りとエルデウスが頷く。

「愛し子に証は見えない。額や手の甲などに証が出た者もいるが、誰一人として己が愛し子であると知らずに一生を終えている……そもそもあれだけでっかい証が見えなかったら視力が不安じゃろうて」

「まあ……そうですね」

思わず気の抜けた返事をしたルカヴィスにエルデウスは微笑む。

その微笑みにルカヴィスは違和感を感じる。

まるで「それが正解」だからと浮かべたような笑み……。

(そういうことか)

目の前にいる神たちにとって自分はただ“在る”だけで、内情などどうでもいいのだ。

自分だけではない、それは人間全般にいえるもの。

唯一の例外が愛し子。

だから神々は愛し子に自分が愛し子だと知られないようにしている。

理由は、愛し子の心を守るため。

思ったことが全て叶うなど、考えてみれば怖い話だから。

五柱には自分の心が見えているらしいと、ルカヴィスが出した結論に満足気に頷く神々をみてルカヴィスは理解した。

「お主にも分かるか」

「セラフィナは分からなかった」

「我々もいまだに分からない」

「分かるからこそ番、番だからここに呼ばれる」

「我が娘は番の願いを何でも叶えた。ある日、その番は自分の思ったことが全て叶っていることを不思議に思った」

男は妻に相談した。

そして妻は「あなたが願ったから、自分が全て叶えてきた」といった。

「番は絶望した」

「彼が思ったことの中には人の死もあった」

「なぜ殺したのかと責める番の言葉を妹は理解できなかった」

「我々も理解できない。どうしてダメだ? できるからした、番のため、それだけのこと」

理解できていないことは分かっていても、理解しようとはしていない。

彼らは神だから。

神にとって人間は、人間にとっての蟻のような存在。

“在る”のは知っている。
その生態も知識として知っている。

でも、人間が蟻を慮ることはしない。

気が向けば避けて歩くが、邪魔ならただ踏みつぶす。

「罪の意識に番は苦しんだ」

「番は死にたいと願った」

「番の願いを叶えることは妹が己に課したこと」

「妹は番のその願いも叶えた」

「娘は番を殺し、娘は番が最後に思ったことを叶え続けるため地上の大気と一体となった」

(番が最後に思ったこと?)

「番は自分たちの子、女神セラフィナの血を引く我が子に全てを叶える力があることに気づいた」

「だから番は願った。子孫が己のもつ強大な力に気づくことないまま一生を終えることを」

「なんでも自由に思える、それが幸せに生きること。それが番の最後の願い」

「セラフィナはそれを今も叶え続けている」

神々はただ史実として話しているが、番の心境はルカヴィスに理解できた。

ただ理解できない。

なぜそれを神々はルカヴィスに話しているのか。

「お主は我々の愛し子の番」

「いわば婿」

(おお……婿……意外な線できたな)

「婿殿に教えを説く、必要なこと」

「久しぶり」

「二千年ぶりの番」

(二千年ぶり!?)

「愛し子は自由に思うことができる、それがセラフィナの願い」

「愛し子の番、その力を知りながら生涯その力を利用しない者しかなれない」

(その力を利用しない者……それは……俺は……)

「私は愛し子であることを利用しセラフィナを妃にしようとしています」

(……俺は相応しくない)

神々は一斉に笑った。

意外な反応にルカヴィスは虚を突かれた。

「使うの意味、違う」

「こんな使い方をしようとする番は初めて」

「これだから人間は面白い」

「神の力を使ってはいない」

「ブランドとして使うだけ。相手が勝手にその価値にひれ伏しているだけ」

「では……問題はないと?」

ルカヴィスの言葉にエルデウスは頷いた。

神々の審判だ、それ以上の安心材料はない……とルカヴィスは思ったが。

「私を認めてくれたことに感謝いたします……感謝しているのですが……愛し子であるからセラフィを妃にできるのに、セラフィにその理由を言えなくありませんか?」

ルカヴィスの言葉にエルデウスは目を見張った。

考えていなかったという表情だった。

エルデウスは救いを求めるように左右の息子神たちを見た。

三人寄れば文殊の知恵という教えは神にも浸透しているのかと、ルカヴィスは見当違いなことを思った。

「のう……」

父神の問い掛けに息子の四柱は揃って目を逸らした。

(おい!)

次の瞬間、また視界が揺れて、目の前にはセラフィナがいた。

「何を言っているの!? 私は貴族じゃないし、平民だし、それどころか親の顔も分からない孤児なのよ」

聞き覚えのある台詞。

ここからか、と思ったルカヴィスの頭に浮かんだのは――。

(丸投げしやがった!)

「……セラフィ、いや、セラフィナ」

愛称ではなくその名を呼べば、その真剣さにセラフィナは口を噤んだが――。

「いろいろあって疲れた」

「え?」

「とりあえず……休みたい。俺の部屋に行くぞ」

そう言うが早いか、ルカヴィスはセラフィナを肩に担ぎ上げた。

「なんでそうなるの!?」

セラフィナは抗議の声をあげたが、疲れ切っていたルカヴィスは無視することにした。

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