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12.第一王子の結婚(2)

溺愛に気づかない彼女は、つぶやきで世界を変える
この記事は約3分で読めます。

「三階、だけど……ちょっと!」

セラフィナの答えを聞くやいなやルカはセラフィナを抱き込んだまま階段を登っていき、あっという間に三階につく。

肩から手を放したもののルカの視線が部屋の場所を問い、セラフィナは諦めたように溜め息を吐くと先を歩いて部屋の扉の前に立つ。

「中に入って、直ぐに鍵を閉めて」

セラフィナは鞄から部屋の鍵を出し、扉を開けたあと『これで満足か?』と問う視線をルカに向けた。

返ってきたルカの表情は満足気。

その態度に、セラフィナは自分でも分からないがムッとした。

「セラフィ?」

「ルカの“大丈夫”って、私のと何が違うの?」

「お、おい……」

「何も分からない、子どもみたいな扱いはやめてほしい。とっくに成人しているし、結婚適齢期も後半、ぎりぎり、崖っぷちなのよ」

セラフィナの言葉に返ってきたのはルカの歯ぎしりだった。

「いっそのこと子どもなら良かったんだ。セラフィが子どもなら、こんなになるかよっ!」

セラフィナは腕を引かれた。

今度は正面からルカの胸に飛び込む形になる。

「ちょっと……」

離れようとする前に、セラフィナの腰にルカの手が回される。

さらに強く抱き寄せられたことに慌てていて、セラフィナはルカの体の『それ』に気づくのが遅れた。

「なっ、これっ!? え、まさか、ええ!?」

「まさかって何だよ!」

照れなのか?
照れだろう。

耳と目元を赤くしているルカ、という珍しいものにセラフィナの驚きはさらに増す。

「服が濡れて、その細い腰とか、背中の色っぽい線とか、あーもー、絶対に何人か見たよな。あいつら、転んで頭打って記憶喪失にならねえかな、なあ?」

セラフィナが聞き慣れない荒っぽい粗野な口調。

それでルカに同意を求められたセラフィナには戸惑いしかない。

「えっと……記憶喪失までいかなくても、見たものを忘れてくれれば十分だと思うよ、うん」

セラフィナがそう言った瞬間、酒場にいる男たちの記憶からセラフィナがエールで濡れた姿が消えた。

(いや、『そんなこと』より!)

気になるのはただ一つ。
体に押し付けられたルカの硬いもののこと。

気が合う知人、もしかしたら友人。

気を張らない会話ができる、気楽な関係。

それがセラフィナにとってのルカ。

それなのに、この状況。

セラフィナは自分が女で、ルカが男であることを強制的に意識させられた。

ウィットに富んだ話術。
豊富な知識。

そして細やかな気遣いができるとこ。

セラフィナの中のルカの、人として「いいところ」が「男としての魅力」になっていく。

ルカの笑顔を思い出すだけで息が詰まり、呼吸の仕方を忘れるほどに。

(ここで別れたら……)

見かける場所や時間が決まっていないルカ。

次はいつ会えるのか分からない。

もう二度と会えなくてもおかしくない男性。

会えないと想像するだけでセラフィナの胸が軋んだ。

自分の世界の軸を奪われたような、世界の揺れる感覚。

そしてセラフィナは――。

(これは、恋だ)

「私、ルカのことが好き!」

先手必勝。

セラフィナの頭にあったのはなぜかその言葉だった。

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