かつて、世界は混沌の中にあった。
大地は荒れ狂い、風は無秩序に吹きすさび、炎はすべてを焼き払い、水は無限に広がっていた。
そんな混沌の世界に神・エルデウスが秩序をもたらし、エルデウスは創世神として崇められるようになる。
彼は世界を四つの国に分けた。
そして、四人の息子に加護を与えさせた。
長子・風の神の加護をもつ、西にある芸術の国「ゼフィリオン」。
次子・火の神の加護をもつ、南にある砂漠の国「イグナレオ」。
三子・水の神の加護をもつ、東にある水の国「アクシオン」。
四子・土の神の加護をもつ、北にある鉱山の国「テラヴェルム」。
調和した世界で、四大国はそれぞれ繁栄を築いていった。
エルデウスにはもう一人、子どもがいた。
彼の唯一の娘である女神・セラフィナは人間の男を愛し、地上の人間に神の血統を残した。
彼女の子孫はたくさんいるが、神の力に目覚めた者は一つの時代にほんの数人。
その希少性と、人間でありながら神の力を使える者として、彼らは「神の愛し子」といつの時代からか呼ばれはじめた。
神の愛し子は、その証として羽の紋様が体のどこかに刻まれている。
神の愛し子は決してその力を悪用しない。
欲望や邪心を抱かない者だから神に愛される。
もちろん周りの者はそうではないのだが、愛し子は悪意を持って近づく者に敏感で、「この人、なんか嫌い」と第六感で拒否されると瞬く間に神の力が発動して破滅する。
この世界にはそんな事例が腐るほどある。
取り扱い超危険。
それが神の愛し子。
そしていま、ゼフィリオンの王都には神の愛し子が一人いる。
名を、セラフィナ。
世界を無自覚で変え続ける彼女が、自らの宿命を知る時は近い——。
「洗濯物が一杯! 今日もよく晴れますように!」
いや、近い、のか?
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